先の記事で、日本の司法が弱いと言われる理由の一つに、最高裁裁判官の任命権が内閣にあることが挙げられました。
では、積極的に違憲判断に踏み込むアメリカでは、日本の最高裁裁判官にあたる連邦最高裁判所裁判官は誰が任命しているのか、今回はこの件について見ていきたいと思います。
もくじ
アメリカでは最高裁裁判官にあたるような人は誰が任命している?
アメリカの連邦最高裁判所の判事(日本の最高裁裁判官に相当)は、
大統領が指名し、上院が承認する
という仕組みで、アメリカ合衆国憲法(合衆国憲法第2条第2節第2項)で定められています。
流れ
例えば判事に欠員が出ると、
① 大統領が候補者を指名
たとえば、
- 民主党政権なら比較的リベラルな候補
- 共和党政権なら比較的保守的な候補
を選ぶ傾向があります。
近年では、
- ドナルド・トランプ
- ジョー・バイデン
がそれぞれ自らの考えに近い候補を指名しました。
② 上院で承認審査
ここが日本との大きな違いです。
候補者は上院司法委員会で厳しい公聴会を受けます。
- 憲法観
- 過去の判決
- 政治的見解
- 倫理問題
などについて何日も質問されます。
テレビ中継されることも珍しくありません。
③ 上院本会議で採決
過半数の賛成で承認されます。承認されなければ判事になれません。
日本との比較
日本
- 内閣が任命
- 天皇が形式的に認証
- 国会承認不要
アメリカ
- 大統領が指名
- 上院が承認
- 強い政治的チェックあり
という違いがあります。
それでもなぜアメリカの裁判所は政権に逆らえるのか
実はここが一番面白い点です。
判事は大統領に任命されますが、任命された後は
終身在職(good Behaviour)
です。
定年もありません。(自主的に退任するか死亡するまで在職できる。)
そのため、任命した大統領からも独立できます。
実際に、保守派大統領が任命した判事が、その大統領に不利な判決を書くこともあります。
例えば、
トランプ氏が任命した判事たちも、2020年大統領選挙後の訴訟では必ずしもトランプ氏の主張を支持しませんでした。
日本との根本的な違い
ここで憲法学者がよく指摘するのは、
日本の裁判官は
- 定年がある
- 最高裁事務総局による人事管理が強い
- 昇進制度が存在する
のに対し、
アメリカ連邦最高裁判事は
「昇進も降格もない」
のです。
頂点にいるので、誰かの顔色をうかがう必要がありません。
誤解してはいけない点
チャットGPTによると、アメリカの司法が強いのは、単に制度だけではなく
むしろ重要なのは、
「裁判所が政治権力を止めるのは当然である」
という文化が200年以上かけて形成されたことだと言います。
そのため、大統領であっても、議会であっても、州知事であっても、
裁判所から
「それは憲法違反です」
と言われれば従うのが基本であると。
「多数決が正しいとは限らないのだから、司法は多数派を制限する機関であるべきではないか」
という考え方は、
実はアメリカではかなり強く共有されている一方、
日本では
「民主的に選ばれた政治部門を裁判所がどこまで止めてよいのか」
という慎重論が比較的強いことです。
この違いが、日本の司法積極主義とアメリカの司法積極主義の差を生んでいる大きな要因の一つだと考えられているのだそう。
しかし、先の記事でも書いた通り、数が暴走する時、少数者の人権を守ることができるのは司法しかなく、また内閣が強大の権限を持つ時、その三権の中で法により暴走を止めることができる盾となるのは司法が求められる役割でしょう。
まとめ
上記の中で、個人的に印象的だったのは、アメリカでは、最高裁裁判官として承認されるに際し、上院の承認審査があることでした。憲法観や過去の判決、政治的見解や、倫理問題について何日も質問される中で、国民はその判事がどのような人物かを判断することができる。国民の目に晒されているということが裁判官自身にも緊張感を与えることができるというのはとても良いことに思えました。
これまで日本では基本的な政府への信頼から人事について内閣の決定に不審を抱くようなことは少なかったと思いますが、昨今のように内閣の人事権が司法の消極主義をさらに強めているのではないかとの疑問が出る状況下では、どんな人物が最高裁裁判官として選出されているのか、アメリカのように事前の承認審査でチェックするという制度に学ぶところが多いように思いました。