2026年6月22日の記者会見で、小野田紀美大臣が記者に「信頼できるAIシステムとはどういう意味ですか」と質問されたことに対し、「信頼できるAIシステムです」とだけ答えました。
(※動画はこちらで見ることができます。→【小野田紀美 経済安保大臣】閣議後会見【ノーカット】(2026年6月22日)|TBS NEWS DIG)
通常、信頼できる〇〇とはどういうことですか?と聞かれれば、例えば、セキュリティ面でとか、法律で適用範囲を規定して、とか、扱える人をこの基準を満たした者に限定して、など、中身について回答があるかと思うのですが、小野田紀美大臣は、ただ「信頼できるAIシステムです」と繰り返すのみでした。
この件で、このような回答は政治家としての資質さえ問われるほどの重要問題ではないかと思うので、この回答の何が問題なのかを、記者会見はなぜ行われるのか、というところから考えてみたいと思います。
もくじ
記者会見が行われる意味とは?なぜ必要?
政治家が記者会見で政策について答えることには、単に「質問に答える」という以上の意味があります。民主主義そのものを支える役割があると言っても過言ではありません。
主な意味を挙げると、次のようになります。
1. 国民への説明責任(アカウンタビリティ)を果たすため
政治家は国民から権限を預かっています。
そのため、
「なぜこの政策を行うのか」
「どのような根拠があるのか」
「どんな効果やリスクがあるのか」
を説明する義務があります。
記者会見は、その説明を国民に届けるための場です。
2. 権力を監視するため
記者は政治家の広報担当ではありません。
国民に代わって
- 本当にその数字は正しいのか
- 過去の発言と矛盾していないか
- 都合の悪い事実を隠していないか
を確認します。
これは「権力の監視」です。
もし政治家が一方的に発表するだけなら、
「これは成功です。」
「問題ありません。」
と言えば終わってしまいます。
しかし記者は
「その根拠は?」
「データを示してください。」
「以前は違う説明でしたよね。」
と問い返すことができます。
これがいわゆる「さら問い」と言われている質問です。
記者は、政治家が話を逸らしたり、答えなかった場合に、
「今の回答では質問に答えていません」と言う役割があります。
このやり取りによって初めて、国民は「政治家が本当に質問に答えたのか」を判断できます。
ですから、質問にまともに答えず「1社1問と聞いています」と言うことが、政治家としての資質に疑問を生じさせる理由もわかるのではないでしょうか。高市総理がXでのみ一方的発信をして記者会見を避けている等と批判されるのもこの問題意識があるからです。
3. 政策の質を高めるため
良い記者会見では、厳しい質問によって政策の弱点が明らかになります。
例えば
政治家
「この制度で十分です。」
記者
「しかし地方自治体は実施できないと言っています。」
政治家
「それなら追加支援を検討します。」
というように、
議論を通じて政策が改善されることがあります。
このような議論による政策の改善は、主に国会での質疑によって実現されることだと思いますが、記者の鋭い指摘によってこういったこともあり得ますね。
4. 国民が判断する材料を得るため
民主主義では、国民は選挙で政治家を評価します。
しかし、何も知らなければ評価できません。
そのため記者会見では
- 政策
- 財源
- 実現可能性
- 優先順位
などが議論されます。
国民はその情報をもとに
「この政策に賛成だ」
「この説明では納得できない」
と判断できます。
記者会見が十分に機能しないとどうなるか
もし政治家が
- 質問を受けない
- 都合の悪い質問を避ける
- 特定の記者だけを排除する
- 一方的な動画配信だけを行う
ようになると、
国民は政策を批判的に検証する機会を失います。
その結果、
- 説明責任が弱まる
- 権力への監視が弱まる
- 誤った情報が修正されにくくなる
- 国民が十分な情報に基づいて判断しにくくなる
という問題が生じます。
憲法との関係
日本国憲法に「政治家は記者会見をしなければならない」と明文で定めた規定はありません。しかし、記者会見は、憲法が保障する表現の自由や「知る権利」の基盤となる制度として重要な役割を果たしています。また、国会での審議や情報公開制度などと並び、民主的統治を支える実務上の仕組みの一つです。
つまり、記者会見は単なるイベントではなく、国民が政治権力を監視し、評価するための重要な制度的実践と言えます。だからこそ、そこで政策について具体的な質問が行われ、政治家が根拠を示して答えることには、大きな民主的意義があります。
まとめ
記者会見とは何のために行われるのか、について見てきました。このように見てくると政治家が答えるのは、国民に対して分かりやすく説明するためであると言えます。
このような場で「信頼できるAIシステム」とは何か?と問われ「信頼できるAIシステムです」としか答えないことは、また、それでは説明として不十分だと感じた記者がさらに質問するのを「1社1問と聞いている」と阻止する態度は、政治家としての仕事を果たしていないのではないかと思われても仕方ないのではないか、そんな風に思いました。